脳性麻痺の障害者との交流記
イラスト集

0 はじめに
1
2 出会い
3 会社の中
4 JTさん入社
5 町に出る
6 レストランへ行く
7 初めて車椅子を押す
  県庁へ行く
8 車椅子に乗ってみる
9 長距離ドライブ
10 ホテルに泊まる
11 電車に乗れない
13 インターネットと福祉
14 養護学校の見学
15 養護学校で講演
16 JTさんの障害の話
18 自動車教習所へ行く
18-0 手動式の車を運転する
18-1 町で見かけた車
19 盲導犬に出会う
22 運動会
23 雨の中レストランへ
24 ギロチン事件
25 災害避難訓練
26 幕張免許センター
27 葛西臨海公園
28 再び車椅子に乗る
29 電車に乗る(前編)
30 電車に乗る(後編)
30-1 鉄道会社の社員の声
31 蔵王のオカマ
32 買い物をする
33 リハビリへ行く
34 薬局での出来事
35 プールへ行こう
36 車椅子でハイキング
 (どうぶつ王国)
38 ふらっと東京湾巡り
39 車椅子の特訓
40 車椅子階段を昇る1
41 車椅子階段を昇る2
42 もしゆきが降ったら
43 東海道新幹線(1)
44 東海道新幹線(2)
45 踏切は恐い
46 野田市の福祉カー

考察
1 再びJTさんの障害の話
2 手を貸す勇気と貸さない勇気
3 リハビリについて考える
4 ハートビル法
レポート
ハワイ車椅子事情
ロサンゼルスレポート1
ロサンゼルスレポート2
ロサンゼルスレポート3

後書き
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町へ出る

JTさんは短い距離ならば2本の杖(ロフストランドクラッチ)を使って歩けます。「これが私の足なんです」と明るく話してくれるものの端から見ているとなんだか危なっかしい。杖というと松葉杖を思い浮かべますが、JTさんが使っているのはロフストランドクラッチと呼ばれている1本の棒に腕の支えと握る取っ手が付いたものを更に腕の太さに合わせて改造が施してあります。

ロフストランドクラッチ ロフストランドクラッチを使っているところ

この改造で腕の細いJTさんでもこの杖が使いやすくなったそうですが、転んだ時にとっさに腕を抜いて手をつく事が出来ずに怪我する事があるそうです。後日、本当に私の脇で転ぶというアクシデントがありました。

松葉杖とクラッチの違いは自分の足でバランスを取れるか取れないかで使い分けるそうです。骨折などで片足が使えないときには松葉杖を、下半身麻痺で両足でもバランスを取る事が難しい人にはクラッチを使うことが多いそうです。

私が乗っている車はチョット背の高い車です。乗用車と違って乗り込むのによじ登らなければなりません。JTさんも車に乗り込むために苦労しています。脇に立って見ている私としては何か手助けをしたいと思うのですが、気恥ずかしくて言葉も出ないまま見ています。
本当は抱きかかえて持ち上げてあげれば良いのでしょうが、“手を貸しましょうか?”の一言が出てきません。
JTさんは座席にもたれるように立ち、クラッチを1本ずつ車の中に入れます。それからおもむろに車内の頭の上にある取っ手に捕まり懸垂の要領で座席に座り込みました。

トヨタハリアーに乗り込む

ともかく助手席に座って頂いて私も運転席へ。すると隣でJTさんがな にやらバタバタと左手を動かしている。左手の先には大きく開けはなさ れた扉が。そう、座った状態で手が届かない。普通なら乗り込むついで に扉を引き寄せるか、すこし体の向きを変えて取っ手に手をかけるので すが、JTさんには車の座席に腰掛けて足を持ち上げるのが一仕事なので、重い扉を閉めるのも大騒ぎ。かくして私はいままでやったことが無いのに、いつも助手席の扉を閉めてあげることに。「お優しいことに」という友達の声に「欧米ではあたりまえだからな」の反論に一同爆笑。

JTさんからすると乗り込みやすい車と乗り降りに苦労する車があるそうです。

一番苦労するのは座席が低く腰が沈み込む軽自動車のセダンタイプと普通車でもスポーツカータイプ。特にスポーツカーのバケットシートの乗り降りは苦労するようです。そして私が使っている背の高い車。

今回は1回で座れましたが、懸垂に失敗して何度か挑戦する事もあるし、途中で笑い出してしまって力が入らなくなって10分ぐらい乗り込めないことも。そんなときにも抱きかかえたい衝動に駆られるのですが、本人から“お願い”と言われるわけでもないし、私はじっと待っているしかないのです。