0 はじめに 1 私 2 出会い 3 会社の中 4 JTさん入社 5 町に出る 6 レストランへ行く 7 初めて車椅子を押す 県庁へ行く 8 車椅子に乗ってみる 9 長距離ドライブ 10 ホテルに泊まる 11 電車に乗れない 13 インターネットと福祉 14 養護学校の見学 15 養護学校で講演 16 JTさんの障害の話 18 自動車教習所へ行く 18-0 手動式の車を運転する 18-1 町で見かけた車 19 盲導犬に出会う 22 運動会 23 雨の中レストランへ 24 ギロチン事件 25 災害避難訓練 26 幕張免許センター 27 葛西臨海公園 28 再び車椅子に乗る 29 電車に乗る(前編) 30 電車に乗る(後編) 30-1 鉄道会社の社員の声 31 蔵王のオカマ 32 買い物をする 33 リハビリへ行く 34 薬局での出来事 35 プールへ行こう 36 車椅子でハイキング (どうぶつ王国) 38 ふらっと東京湾巡り 39 車椅子の特訓 40 車椅子階段を昇る1 41 車椅子階段を昇る2 42 もしゆきが降ったら 43 東海道新幹線(1) 44 東海道新幹線(2) 45 踏切は恐い 46 野田市の福祉カー 考察 1 再びJTさんの障害の話 2 手を貸す勇気と貸さない勇気 3 リハビリについて考える 4 ハートビル法 レポート ハワイ車椅子事情 ロサンゼルスレポート1 ロサンゼルスレポート2 ロサンゼルスレポート3 後書き 戻る
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蔵王のオカマ 蔵王のオカマ
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今回の山形行はJTさんと佐藤さん、私が新幹線を利用しました。 山形市の天気予報では曇りでしたが、時より強い日差しがさす良いお天気で、河原では羊さんがまるまる1頭クシザシにされ火にあぶられています。皆思い思いの場所で話しをしたり、バーベキューをしたりとくつろいでいます。 合流した私達もさっそく大勢の中にまじり、飲んだり食べたり、騒いだり。前日に「JTさんのあ・し・あ・と」を皆に紹介しておいたので、沢山の人がJTさんのに声を掛けてきてくれます。
JTさんの車椅子には後ろにクラッチを括り付けられるようになっています。クラッチを取り付けると腕を通す輪の部分が2つ丁度JTさんの頭のところに来ます。ふと見るとその輪の部分がカップフォルダーにそっくりなのです。
![]() JTさんの車椅子の後ろに縛ってあったクラッチは いつの間にかカップフォルダーになっていた 13時頃、佐藤さんも石塚君も山形は初めてということで何処か遊びに行こうという話になり、蔵王山頂は雲がかかっているのでおそらく見ることは出来ないでしょうが、折角なので行くことを提案しました。 JTさんの車椅子を後ろに載せ、出発です。車に搭載されている外気温計は34度をさしていましたが、坂を登につれてどんどん下がっていきます。木々も高度が高くなるにつれて背の高いものは姿を消して、背の低い樹木だけになります。車の窓を開けるとウグイスなどの鳴き声がすぐ近くに聞こえます。
山頂の手前のところにお釜への道と宮城県側へ降りる道があります。蔵王エコーラインそのものはずいぶん昔に無料になりましたが、山頂へ向かうには左に折れて料金所で500円を支払います。
でもこの頃から外は雨風が強くなり嵐の様相です。私はライトを点けて最後の坂を登っていきます。駐車場についても車から降りることが出来ないほどの大雨です。でも山頂のレストランから傘もささずにびしょぬれで帰ってくる人がいるところを見ると突然降り出したようです。 そこで石塚君とJTさんにはかっぱを着てもらい佐藤さんと私は傘をさして車を降りました。すれ違う人達が「口々にお釜が見えた」と話しているので半信半疑で山頂のお釜を目指します。レストランは真新しい建物に建て替えられており車椅子用のスロープや自動ドアが完備されていましたが、山頂側の出口は5段程度の階段でした。でも佐藤さんが車椅子を後ろ向きにしてそのまま後輪を使って降りていきます。さすが! その先しばらくは舗装されている急な坂道ですが、すぐに砂利道になります。佐藤さんは車椅子の小さな前輪を持ち上げJTさんの体重を後輪の中心に持ってきてそのまま進んでいきます。砂利道というより、火山の噴火口らしく岩がごろごろ、土もでこぼこしています。そこをまるで砂やセメントを運ぶ一輪車を押すような要領でどんどん登っていくのです。もし私だけだったらこの時点で諦めてJTさんを抱えるか、車椅子ごと持ち上げて運ぶことを考えたでしょうが、こんな方法が有ったのかとビックリしてみている私に「車椅子の前輪は障害物がある場所では邪魔になるだけですから後輪だけで押すと楽なんですよ」と解説してくれました。 さて登り切っても、すこし降りないとお釜は見れません。まだ霧がかかっていてお釜が有る場所すら見えませんが、車椅子を押しながら下っていきます。しかし巨石奇石が増えてきてさすがの佐藤さんもこれ以上進むのは危険と判断しまし立ち止まったときです。突然風の向きが変わって目の前の霧がどんどん晴れて行き、私達の目の前にコバルトブルーのお釜が姿を現しました。
なんて運が良いのでしょう!私も10回ほど来ていますが、3回しかお釜を見ていません。地元の人は何度も来ているのに1度も見られてことはないという人もいます。
オマケ
帰りの車のなかでJTさんがポツリと「オカマを見に行くというから、私てっきり山形にも変なところがあるのかと思った」といいました。バーベキューの河原に戻るまで車の中は爆笑の連続。JTさんもお腹を抱えて笑ってしまい、「あんな素敵な蔵王のお釜が見れたなんて嘘みたい」というのがやっとでした。
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